高校生くらいの時のことなんですが。
その時の自分は、恥ずかしながら怖いもの知らずといいますか、怖いものなんてないぜ!なんでもできるぜ!といきがっていた若者でした。
そんなのりに乗ってたころに、昼間一人で歩いてたところ、いきなり「怖い」という思いでいっぱいになったんです。
のどかな田舎を線路伝いに歩いていて、怖い要素はまったくなかったんですが…。
気持ち悪いとかはなかったんですが、泣きそうになるくらい意味も無く恐怖を感じたんです。
言い知れぬ恐怖心を抱えたまま帰宅し、今さっき起きたことを祖父に話したところ、
「そこには霊がいたんだよ」
とぽつりと言い、興味深い話を聞かせてくれました。
その話は「ひだる神」。
昔から伝わる妖怪の類らしい。
山の中とか人気のない道を歩いていると、急に体が重くなって、とてつもない空腹感に襲われ、一歩も動けなくなるっていう話。
かつて行き倒れた人の霊がそうさせるんだ、なんて話もあるらしい。
「お前も、体験者の一人なんだろうな」
こういう体験って、一人だけじゃ語り継がれにくいけど、逆に言えば似たようなことを体験してる人は他にもたくさんいる、だから現世に伝わっているということでもあるって。
この世は、見えるものがすべてじゃない。
たとえ何も見えなかったとしても、恐怖を感じる何かがそこにいたってことなんだろう、と話してくれました。
なんというか、不思議な話って信じるかどうかは人それぞれだけど、祖父の言葉には妙に説得力がある気がして、この体験は今でも心に残っています。
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