【怖い話】夢の中の泥棒

大学時代のことです。

当時、わたしはボロアパートの1階に住んでいました。

夜中眠っているとき、しょっちゅう泥棒と思しき人物が入ってきて、部屋の中を歩き回るのです。

と言ってもそれ自体は夢なのですが、非常に現実感があります。

自分は部屋の中で寝ていて、天井を見ているのです。

わたしの視界の外を、誰かが歩いているのがはっきりと分かります。

しかし、起きると忘れてしまいます。

そういうことが何回か続くうちに、こんなこと初めてじゃないなと気付くようになってきました。

そのうち本当に泥棒が入ってくるかもしれないなと思い、パイプベッドを分解しました。

分解した鉄パイプを枕元に置いておきたくて。

いざとなったら、それを持って戦おうということです。

ある晩、また同じ夢を見ました。

本当に夢かどうかはわかりませんが、夢だと思いたいのです。

部屋に誰かが侵入して歩き回っています。

わたしは

「やばい!泥棒が入ってきた!」

と思いました。

本当に怖かったです。

心霊現象として怖かったのではなく、泥棒が居直り強盗になるのが怖かったのです。

家に泥棒が来たら、普通怖いですよね。

私は気付かないふりをしていました。

そして、歩き回っている泥棒が背中を向けた瞬間、用意しておいた鉄パイプで後ろから一撃をくらわせてやろうと思いました。

ですが、いざ飛び掛ろうとした瞬間、異変に気付きます。

体が動かないのです。

どんなに頑張っても動けません。

そして思い出しました。

いつも泥棒が入ってくると体が動かなかったことを。

今回が初めてではなかったことを。

そしてその泥棒は私の意図に気付いたのか、私を攻撃してきました。

私の上に馬乗りになって首を絞めてきました。

後で考えると変なのですが、泥棒の姿は見えません。

姿は見えないのですが、いることははっきり分かるのです。

そのときはとにかくもがいて、泥棒を跳ね除けようとしました。

しかし体が動きません。

そして、目が覚めました。

それ以降、自宅にいるのが怖くなり、友人宅にしょっちゅう泊まりに行ったのですが、夜中うなされていることが多かったと聞かされました。

「うう…」とうめくのではなく、「うわっ!」と叫んでいたらしいです。

わたしも夜中、誰かに蹴られる感覚がしょっちゅうありました。

体に衝撃が走るのを感じました。

蹴られているのが見えるわけでもないのですが、蹴られていると直感的に分かりました。

そのボロアパートは成り行き上、引っ越すことになりました。

もう10年も前の話です。

引っ越してからは、怖い体験はありません。

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