【怖い話】田舎の寂れたホテル

母からお土産がてら聞いた話。

私の母と父はもう随分前に離婚しているのですが、職場の同僚とご縁があったようで、現在は再婚しております。

今から5〜6年ほど前、仕事の関係でその再婚相手と二人そろって地方に出向いたときのことです。

あれこれと予定が狂い、もともとは日帰りの予定だったらしいのですが、ド田舎の真っ只中で日が暮れてしまったそうです。

仕方なく暗い中でポツネンと建っている寂れたホテルで夜を過ごすことにしたそうです。

近づくにつれ、とても陰気でどうにもいや〜な感じが高まっていったそうですが、他にいくあてもなく、仕方なくチェックインしました。

個室の入り口の靴を脱いで上がる部分は、畳敷きになっていて、実際の寝室部分とはふすまで仕切られていました。

中に入り、ふすまをしめてベッドでくつろぎかけたら、ふすまの向こう、畳敷きの玄関から、「ザザッ、ザザッ、」と、誰かが歩くような音がし始めたのです。

ちょうど畳の上を草履で引きずるような、着物の衣擦れのような、そんな音がしたそうです。

でも気丈な母は、もともとそういう霊とか怪談を怖がる性質ではなかったので、臆することなくスックと立ち上がり、「誰っ!?」と怒鳴りながら、サッとふすまを開けたそうです。

そこには誰もおらず、何もなく、シーンと静まりかえっていました。

母はその後安心して寝てしまいましたが、怖がりの再婚相手はまんじりともせず一晩を過ごしたそうです。

この話を母はけらけら話しますが、再婚相手の方は怖くてもうその話はしたくない、と言っていました。

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